2008年06月14日

母の弁当・改変版

私の母は昔から体が弱くて、それが理由かは知らないが、
母の作る弁当はお世辞にも華やかとは言えない質素で見映えの悪い物ばかりだった。
友達に見られるのが恥ずかしくて、毎日食堂へ行き、お弁当はゴミ箱へ捨てていた。
ある朝母が嬉しそうに「今日は〇〇の大好きな海老入れといたよ」と私に言ってきた。
私は生返事でそのまま高校へ行き、こっそり中身を確認した。
すると確に海老が入っていたが殻剥きもめちゃくちゃだし
彩りも悪いし、とても食べられなかった。
家に帰ると母は私に「今日の弁当美味しかった?」としつこく尋ねてきた。
私はその時イライラしていたし、いつもの母の弁当に対する鬱憤も溜っていたので
「うるさいな!あんな汚い弁当捨てたよ!もう作らなくていいから」とついきつく言ってしまった。
山岡「確かに、飯は最悪、海老も最悪。さらにオバサン、肝心のあんたの腕が最低だ」
母「な、なんですかあなたは」
山岡「おごり高ぶった心で作れば、海老の殻剥きもめちゃくちゃになってしまうんだッ!
    心のこもってない弁当はただの米と海老の塊だ!弁当じゃねえ!」
「え…そこまで言ってない」
山岡「明日もう一度この家に来てください
    こんな母親が作ったようなおにぎりよりずっとうまいおにぎりをご覧に入れますよ」
翌日、山岡と名乗る新聞記者が持ってきたお弁当は確かに美味しかった。
母は悲しそうに「まずくてごめんね…」と言いそれから弁当を作らなくなった。

それから半年後、母は死んだ。私の知らない病気だった。
母の遺品を整理していたら、日記が出てきた。
中を見ると弁当のことばかり書いていた。
「手の震えが止まらず上手く卵が焼けない」
日記はあの日で終わっていた。


posted by NET AGE at 16:36| Comment(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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